2008/12/30(火)ドラマCD:銀河鉄道の夜

ドラマ銀河鉄道の夜
主役お二人の演技は良かったですが、シナリオは改変が多くて、童話を読んだことのない人がこのタイトルに最初に接する媒体としては良くないのではと思いました。「ジョバンニはいじめられていました」とナレーションではっきり言ってしまっているのですが、原作を読む限り主人公は学校ではともかく、活字拾いの仕事場では、いじめられていた訳ではないと思います。わざわざ、せっかく拾った活字の箱をぶちまけさせられるシーンを入れるのはやりすぎでは。


演技という点では、小野さんの家庭教師が少し怖かった。雇われ人としては雇い主の子ども姉弟とも、アメリカへ無事送り届ける義務があるわけで、ボートが足りなくて諦めるにしても、自分だけではなく子どもたちも犠牲にして自らの信念に近づく、と言っているように聞こえて、無理に子どもを害して親子心中する親のような狂信さを感じてしまったので。

宮澤賢治の他の作品同様これも未完の草稿から構成されて現在の形になっている作品です。この中ではあいまいな部分が多くある。例えば、カンパネルラがどの時点で自分の死を自覚していたのか、同じ列車に乗っているジョバンニの状態をどのように理解していたのか、ジョバンニが鉄道に乗ったのはザネリの事故を知る前か知ったあとか、など。
列車の座席に張ってあるビロードは最初は青だったのに、カムパネルラが消えたあとでは黒に変わっています。ドラマCDではここにカムパネルラの衣服を残していますが、それは登場時に来ていた「ぬれたように真っ黒な上着を着た」との混同かもしれません。直前のカムパネルラの台詞が良かっただけに、(服だけ残して)「生身だけ消えた」との連想は怪談めいて聞こえました。

声優さんでは かおる役の桑島さんも信心深い少女として合っていたと思いました。CD中では石田さんだけ「カンパネルラ」と言っていて、神谷さんの役名が統一されていません。細かいことが気になる方は注意。