トリプルキャストの、TRKチームで見てきました。
幼児役も成人女性役も全員男性というのは、一部違和感はあったものの、セリフやエピソードはほぼ原作通りなのはすごい。(違い:レディ・ローズの部屋から子どもたちを追い払うのにグレアムが壊したもの:カップ→ガラス、アンジーの右手骨折がなくなる、マックスの特徴オデコ→「ピーマン頭」、アンジーのびっこ呼ばわりがなくなる)
セットは階段と街灯1本だけで、通りになったり、部屋の中になったり、ホテルの非常階段になったり、港になったりしました。
原作花とゆめコミックスの1-2巻から「動物園のオリの中」「だから旗ふるの」「階段のむこうには…」の3本をまるまる演じたプログラムでした。これなら、四人が家出した経緯もわかるし、四人の性格の違いもわかる、なるほどと思える取り合わせでしたね。
(あとで原作コミックと照合してみたら、違うところはかなりあった。原作の喫煙シーンが全くなくなっていたのは良い。しかしそれなら、ホテルのウィスキーをアンジーが「買った」と言っているのも今の時代ではアウトなのでは?)
「動物園のオリの中」でサーニンが近所のおばさんを「ゴリラみたい」と評するのは、まるで今回の舞台化に誂らえたようなセリフ(実際に笑いを取った)。アンジーが歩行訓練中「平地なら走れる」と繰り返すのは、もしかして笑うところだったのだろうか? エイダの松本 慎也さんはさすがにうまいと感じた。
今回一番観て良かったのは、グレアムの回想と悪夢。他人を自分の思い通りにしないと気がすまない暴君の父親と、娘ではなく甥を可愛がる伯母、右目のことと伯母の自殺に追い詰められていく鬼気たる心情が、この舞台ではよりリアルでした。手首から流れる血は、布やテープでなく、階段に照明で赤い帯を描いたのは面白い演出でした。
「自分の影を飛び越そうとするグレアム」は、7歳でなく成人男性が演ると一層、常軌を逸した心情が表現されていて、雪山で麻薬摂取がなくてもいずれグレアムは一度は狂わずにはいられなかっただろうと思わせられました。
そのシーンに続く階段の上下に分かれてのエイダとアンジーの対決は、構図が原作そのもので、(アンジーはちゃんと左手でナイフをかざしている)演出でも見せ場として配しているとわかりました。その前マックスが「ボクのこと嫌いになってね」というシーンを抜いているのは、あってもよかったと私は思いますが、現行通りセリフで流してよかったのか?
原作は「つれていって」まででも14巻あるので、いずれまた続編があるならば、ぜひ見たいと思います。